犬のおまわりさん

このお話は、お人形絵本の番外編エピソードにまつわる犬のおまわりさんのお話です。
魔女の森のある日のこと、いつものようにつかさちゃんが走って部屋に飛び込んできました。

「おばばぁ〜森のはずれに小さな建物が出来てたどぉ。あれって、なんだか知ってる?」(つかさ)

「ほう、もう気がついたのかぇ。流石にめざといのぉ?」(マリオネットおばば)

「だってさぁ、あそこはつかさの飛行訓練場だよぉ。そりゃぁ、気がつくよ〜」(つかさ)

「あれはなぁ、駐在所なんじゃよ。魔女村も最近は住人が増えてきて、いろいろと問
題が起こるからのぉ。皆で駐在所でも置くかぇと言うことになったんじゃ。」(マリオネットおばば)






「へぇ、そうなんだ。それでおまわりさんは来てくれるの?」(つかさ)

「それがのぉ、最近の世の中は犯罪が多くて、こんな魔女村にまで巡回は無理なんだ
そうじゃ。自分たちでなんとかせえと魔界協議会に断られてしまってのぉ。」(マリオ
ネットおばば)

「あれま、それじゃどうするのさぁ?」(つかさ)

「それでな、警察犬を一匹貰って番をさせる事にしたんじゃ・・・ただしな、警察犬
テストに落ちた犬なら持って行っても良いぞと言われてしもうてなぁ。」(マリオネッ
トおばば)

「それで、落ちた犬を貰った訳なんだ・・・そんなんで番なんて出来るのかなぁ。」
(つかさ)

「まぁ、そういうことじゃから。明日には交番勤務させるようにするからのぉ。魔法
をかけて立って歩けるようにはしておいたから大丈夫じゃろて。  
ついでに話も出来るようにしてあるからからのぉ。」(マリオネットおばば)






次の日の朝早く、眠い目をこすりながらつかさちゃんは交番に行きました。
そこにはもう、おばばの話していた犬のおまわりさんが立っていました。

「おはよう〜。犬のおまわりさん。」(つかさ)

「おはようございますだワン。」(ワンダフル)

「おばばの弟子のつかさって言うんだど。よろしくねん。」(つかさ)

「本官は、今日からこちらに配属となりました、KJポリスのワンダフルですワン。
こちらこそよろしくですワン。」(ワンダフル)

「あれ?警察学校落ちたというのに、制服まで着てるど。」(つかさ)

「これは、マリオネットさんが真似して作ってくれたコピー制服なんです。良く出来
ているでしょ。拳銃も警棒もついてるんですワン。」(ワンダフル)

「うん、マークと小物だけはそれなりって感じがするどぉ。ところでワンダフル、お
昼どうするのさ?つかさがドックフードでも、持って来てあげよかぁ?」(つかさ)








「いえいえ、ここは交番なのですワン。交番といえばあれと聞いてますが?
わかりませんか?あれですよワン。」(ワンダフル)

「あれ?あれって、まさかあの古〜い、お決まりのギャグのじゃないよねん?」(つかさ)

「はい、さっきフォーちゃんという少年がお昼はかつ丼を出前するから
いっしょに食べようと言ってましたのだワン。」(ワンダフル)

「だけど、ワンコは玉ねぎは食べてはダメだど。つかさが玉ねぎ抜きって頼んで来てあげるからねん。」(つかさ)

そういうとつかさちゃんはほうきに乗って、どこかへ飛んでいってしまいました。

「この村の人は何故か異常にかつ丼の話になると盛り上がるみたいですワン。」(ワンダフル)




お昼になると、約束どうりにフォーちゃんが現れました。

「かつ丼の出前でしゅ〜かつ丼と言えば知る人ぞ知るお人形絵本最初のテーマでしゅ
からねぇ。交番が出て来たら、かつ丼はセットなのでしゅ。」(フォーちゃん)

「そうなのですキャン?」(ワンダフル)


「ワンダフルしゃんのは、玉ねぎ抜きでしゅ。どうぞぉ。フォーちゃんも、いっしょ
に食べて行くのでしゅよ。あっ、このかつ丼はでしゅね、おくれしゃんに頼んで作っても
らったのでしゅよ。」(フォーちゃん)

「お昼つきなんて申し訳ないですワン。」(ワンダフル)

「ここでは、お給料は出ないのでしゅ。お金があっても使える所もないのでしゅか
ら。みんなお礼に何か持ってきましゅよ。」(フォーちゃん)






「もし病気の人が来た時はどうしたら良いですキャン?」(ワンダフル)

「納涼病院からナースしゃんも呼べますし、入院もちょっと怖いでしゅが出来るのでしゅよ。」

「おおっ、病院まであるのですね。」(ワンダフル)
「軽いものは、魔女しゃんたちのおくしゅりで治ってしまいましゅから、心配いりましぇん。」(フォーちゃん)



「強盗とかも、でますキャン?」(ワンダフル)
「魔女の村なので、怖いので強盗しゃんは来ましぇんよ。強盗しゃんも何かに変えら
れたくないでしゅからね。」(フォーちゃん)
「悪い人はいないのですか?それは、安心しました。実は私はとても臆病なので、警
察犬のテストに落ちたのですワン。」(ワンダフル)
「大丈夫でしゅよ。ここでは、困ってる人のお手伝いがお仕事なのでしゅからね〜ワ
ンダフルしゃん頑張ってくだしゃい。」(フォーちゃん)
「はい、本官がんばりますだワン〜敬礼なのだワン。」(ワンダフル)
かつ丼をたらふく食べてフォーちゃんは、満足して帰っていきました。




お昼休みも終わり、また交番に立っていると、急に空の雲行きが怪しくなり黒い服の
美女が現れました。

「おっほほほほほほ、はじめましてざあますわ。」

「こんにちワン。どちらの魔女さまですか?」(ワンダフル)

「あら、わたくしを知らないなんて、やっぱり新米だけのことはあるざますね。私は
美魔女のブライドざますよ。」

「そうですか。勤務日誌に美魔女 ブライドさま来訪とつけておきますのだワン。」
(ワンダフル)