長靴を履いた猫1


むかしむかし、あるところの粉ひき小屋に主人と三人の息子たちが住んでおりました。
ある日のこと粉ひき小屋の主人が重い病いにかかり、三人の息子たちを残して死んで
しまいました。

粉ひきの暮らしは貧しかったので、お金はほとんど残っておらず
財産といえるものは水車小屋とロバと一匹のネコだけでした。



「いいな。長男のおいらが水車小屋はもらうぞ。なにせおやじの粉ひきを手伝って来
たのは、おいらだけなんだからな。」(じゃがくん)

「じゃぁ、ワスはこのロバを貰うダスよ。ロバの世話をずっとしてきたのはワスなんダスから。」(コロコロちゃん)


「えぇぇ、それじゃぁ、このネコしか残らないのでしゅ。貰って食べてもちっともお
いちくはではないのでしゅし、毛皮を手袋にちても、化けて出られたらとっても怖いの
でしゅ・・・」(フォーちゃん)
「おまえたち、いいかい。仲良く財産を分けたと知ったら天国のとうさんもきっと喜
んでくれるから、これで決まりだぞ。わかったな!!」(じゃがくん)
長男にそう言われ、しぶしぶネコを貰った三番目の息子でしたが、
「ネコなんて貰っても何の役にもたたないのでしゅ〜いったいこれからどうやって暮
らしたら良いのでしゅかぁ・・・お腹がへって死んでしまうのでしゅ〜。」






そんな三番目の息子の嘆きをずっと聞かされていたネコは、山の中に住むという動物好きの
魔女に会いにいきました。

「おやおや、お前はどこのネコじゃな?」
「にゃ〜ぁ にゃ〜ぁ。」
「お腹がへってるのかぇ?」(マリオネットおばば)
ネコはそう聞かれても首を横に降りながら、ずっとニャーニャー鳴いているだけで
す。


「うるさいのぅ。何を言いたいのかそのままでは、わからんぞぇ。さて、これでも食
べるかのぅ?」と言いながら、またたびの匂いのする魔法の種を猫に与えてやりました。

するとどうでしょう。驚いた事に 「にゃ〜」と言おうとしたネコが

「そうではありませんにゃぁ〜あ、あああ、なんと喋れてますにゃ〜これはいったい
どうしたことでしょうにゃぁ?」


「ははは、わしは魔女だぞぇ。お前の気持ちぐらいはすぐにも解るからのぉ。お前は
ご主人を助けたいのじゃろう? これならお前の気持ちも伝えられるじゃろうて。」
(マリオネットおばば)

「はい、魔女さまとてもうれしいですにゃん。」
「ネコや、おまえは気の優しいわしの所へ来て良かったのぉ。間違えて、イザベル
城にでも行っておったら、何に変えられていたかもわらんじゃて。そうじゃ、長靴をはいて立っ
て歩くと良いぞぇ。さすれば、だれもネコとは気がつかんじゃろ。」(マリオネットおばば)
「はい、急いで帰ってご主人さまに頼んでみますにゃ〜。」
ネコは山を大急ぎでおりて主人の元に戻りました。


「せっかく貰ったネコなのに家出してもう三日も帰ってこないのでしゅ。
食べてもおいちくないと言ったのが気に触ったのでしゅかね?」

「ご主人さま。ただいまですにゃ〜。」

「ひぇぇぇ、たまげたでしゅ。ネコがしゃべりまちたでしゅ。」

「はい。私はご主人さまを助けたくて、山奥の魔女さまにしゃべるようにしてもらって来たのですにゃぁ。」


「なんと主人思いの猫しゃんだったのでしゅね。」

 「はい、ご主人さま。でもお助けするには、お願いがありますにゃ。わたしに長靴を
作ってくださいにゃ。それから、大きな袋も欲しいですにゃ。」 





三番目の息子は言われた通り頑張って、長靴と大きな袋を作ってやりました。

「そこの箱に着れなくなったお洋服もありましゅ。着れるのをあげましゅよ。」

「ありがとうですにゃん。助かりますにゃぁ。これであなたのために働けそうですにゃん。」(ニャイーン)
ネコは出来上がった長ぐつと古いズボンを履いて、大喜びでいいました。






ネコは箱の中から見つけたマントや帽子類を身にまとい、長靴を履いて、大きな袋を首
にかけ、うさぎをたくさん放し飼いしている場所に行きました。そこで袋の中に人参を
入れて置き、袋のひもを長くのばして、そのはしをつかんで隠れておりました。


すると袋の中へ、ピョン、ピョンとうさぎたちが飛び込んで入っていきました。
ネコはつかんだ紐をひき、ウサギを捕まえました。
「このウサギを見たら王さまも大喜びされるにちがいないですにゃ。」

実は この国の王さまは、ウサギが大の好物なのでした。


ネコはシルクハットをかぶり、ウサギの入った袋を持ってお城へ行きました。お城は衛兵たちが(花尾鳥)  
門番をしていたので、王様にお目どおり出来る様に願いました。


門番の衛兵に連れられ王様のご御前へ出たネコは、うやうやしいおじぎをして
「わたくしの主人、カラバ公爵からのおくり物をお届けにまいりましたにゃ。」
そういって王さまにウサギを差し出ました。

「ほう、これはかたじけない。侯爵殿におめにかかったことはないが、直接お礼を言い
たいのぉ。これから、すぐにお礼に参るとしようぞ」(フォーちゃん)




それを聞いたネコは、あわてて家ヘ戻って言いました。
「ご主人さま、早くわたしについてきてくださいにゃ。」といって、急いで主人を川に
連れ出しました。


王さまの馬車がこちらに来るのを確認して、おぼれたふりをしている主人の横でネコ
は大声で叫びました。


「たいへん!!たいへん!!カラバ公爵さまが、おぼれそうだにゃ!ドロボウに、服を盗ま
れ川に
落とされてしまったにゃ! だれか助けてください! はやく!はやく!」
 王さまは、それを聞いてビックリ。
「早く助けてさしあげろ。そして、何か公爵殿が着れる服を探して来くるのだ。」と
おつきの者(めめちゃんたち)たちに命じました。





そのすきにネコは、となりの畑に行き、野良仕事をしているバレンタインちゃんに
「おい、お前。この畑は、誰の物か知っているかにゃ?」と聞きました。
「ああ、ここはイザベル城のイザベルさまの物に決まってるじゃないの。」(バレンタインちゃん)


「ばかもの。何を言っているのだにゃ。ここは、カラバ公爵の領地だぞ。
 誰かに聞かれたら、この畑はカラバ公爵さまの物だと言うんだぞ。
 さもないと、お前の頭をガリガリかじってやるからにゃ!」
 驚いたバレンタインちゃんは、
「そんなことされたら、せっかくのわたしの美貌が損なわれるじゃないの。わかった
わよ、約束するわ。だからかじらないでね。お願いよ。」と約束しました。