くさったりんご





むかしむかしあるところに、とても仲むつまじい、お百姓さんの夫婦が暮らしておりました。
貧乏だった二人の家は、雨漏りもひどく、ドアさえしっかり締められないほど傷んでいるあばら家でした。
それでも、庭には飼い犬が一匹いて、小さな池にはアヒルも泳いでいます。
季節の花々が庭を飾り、二人の大好きな小さいリンゴの木が庭に植わっていたのでし た。



ある日の事です。町でめずらしく市が開かれることを聞きつけた奥さんが言いました。
「ねえ、お父さん、めったに開かれない市だから、うちも何か持って行って換えて来てくれないかな?
そうだわ、うちの年老いたあのウマを何かに換えられないものかしら?」(アップル)
「それはいいけど、いったい何と取り換えて来たらいいんだい?」(グラントン)
お父さんが聞くと、お母さんはニコニコしながら答えました。
「あらぁ、いつものことなのに〜。何でもお父さんにまかせるに決まってるじゃない。
お父さんのする事に間違いはないと思っているんだから。」(アップル)
「そうかい、それならまかせてもらうかな。」(グラントン)
お父さんはにっこりほほ笑むと年老いた馬に乗り、のんびり出かけて行きました。





ゆっくり道を進んでいくと向こうから、牝牛を引いたバレンタインちゃんが通りかかりました。
「バレンタインちゃん、見事な牝牛を連れてどこへ行くんだい?」(グラントン)
「牝牛を何かと交換しにいくの。でも、市まで遠くてわたし歩くの疲れちゃったわ。」(バレンタイン)
「それなら、この馬と交換してくれないかい?」(グラントン)
「うん、いいわよ。私、馬が大好きだから換えてあげるわ。
一番好きなのは、本当は白い馬なんだけどね。」(バレンタイン)
そういうと、交換した馬に乗ってバレンタインちゃんは帰って行きました。



「これなら、きっと良い牛乳がとれるな。奥さんが喜びそうだ。」(グラントン)
 
お父さんは、このまま牝牛を引いて家に帰ろうかなとも思いましたが、めったにない市です。
やはりもっと見ておこうとまた歩きだしました。

すると今度は、のんびりと羊を連れたつかさちゃんに出会いました。
「こりゃ毛並みのいい羊だね。」(グラントン)
「うん、メェメェさんと言うんだど。」(つかさ)

「つかさちゃん、良かったらメェメェさんとこの牝牛を換えてくれないかな。」(グラントン)

「交換したら、毎日ミルクが飲めそうだねん。ええどぉ〜換えてあげるど。」(つかさ)

つかさちゃんは、大喜びで牝牛と羊を交換してくれました。

「ウシさんは、ヒツジさんの何倍も高いんだど、おばばがきっと褒めてくれるど。
おばばぁ〜つかさとったどぉーー。」(つかさ)



お父さんが羊をもらってまた歩いて行くと、畑の方から大きなガチョウを抱い
たフォーちゃんに出会いました。

「あんなガチョウが、もし家の池に泳いでいたら、自慢ができるのだがなぁ。」(グラントン)
そう思ったお父さんはさっそく、ヒツジとガチョウを取り換えてくれないかとフォー
ちゃんに頼んでみました。


「えぇっ、よいのでしゅかぁ〜? ヒツジしゃんはガチョウしゃんの何倍も高いのでし
ゅよ。」(フォーちゃん)
「ああ、構わないさ。」(グラントン)



「そうでしゅかぁ。わぁーい、やったでしゅ〜ありがとうでしゅ〜。」(フォーちゃん)
と言って、大喜びでフォーちゃんは羊を連れて帰っていきました。



お父さんがガチョウを抱いて町の近くまで行くと、メンドリをひもでゆわいている小
人の先生に会いました。
「メンドリはタマゴを産むから、お母さんはきっと助かるぞ。」(グラントン)
 お父さんはガチョウとメンドリをとりかえないかと小人の先生にもちかけました。




「市が立つと言うから、山から下りて来たんじゃが、まさかガチョウが手に入るとは
思わなかった。」(小人の先生)
何しろガチョウは、メンドリの何倍も高いのですから、小人の先生は大喜びで山に帰って行きました。





「やれやれ、大変な物々交換だったなぁ。流石にわしも少し疲れて来たぞ。」(グラントン)
お父さんはメンドリを連れて、休憩する所をさがしました。



お父さんがお酒やパンを食べさせてくれるお店に入ろうとすると、
大きな袋を持ったダレン君にぶつかりました。