ニャイーンとミャイーン


これは、お人形絵本の掲示板からうまれたお話です。

ある日のこと、猫のニャイーンが子猫を連れて、イザベルのお城に帰ってきました。

イザベルさま、私の妹を紹介しますだにゃ〜
あら、可愛い子だこと。でも、お前と毛並みが全然違うのね。

もちろん、腹違いですにゃん。

あら、そうなの。まだ、ほうきには乗れそうにないわねぇ。仕方ないから、
イザベル城のお掃除でもしてなさい。

お掃除したらミルクが貰えるのでちゅか?がんばるのでちゅよ、みゃ〜







その日から、ミャイーンはイザベル城の片隅で暮らし始めたのですが、その数日前に
ニャイーンはミャイーンをみつけたのでした。

ミャイーンのお母さんは、ミャイーンを暫く育てていたようですが、いつもの放浪癖が
出て、ミャイーンを置いて何処かに行ったきり帰っては来ませんでした。

その夜のこと、寝床に入ったニャイーンの耳がぴくぴくと動いています。

「みゅー。みゅー。」「みゅー。みゅー。」

「何処かで誰かが鳴いているのだにゃん。お腹が空いたと鳴いてるようだにゃん。」

猫の鋭いテレパシーで、助けを呼ぶ妹の鳴き声が、ニャイーンにはわかったようでした

「みゅー。みゅー。」

「これは大変だにゃぁ。おいらについてくるのだにゃ〜」

ニャイーンは住み込みのイザベル城の屋根裏部屋にミャイーンを連れて帰りました。







ところでこの二匹いえ、二人のお母さんはたしか違うはずでしたね。

二人のお父さんは、近所のメス猫たちを巡回して、二人のお母さんたちをみつけたよう
ですが、子猫にはまったく
興味がないようで寄り付きもしません。


そんなミャイーンを引き取ってみたものの、魔法どころか狩りもまだ出来ないのです

なので、お掃除をしては大好きなミルクを貰いお城で暮らすことになりました。

ある日兄に貰った本を見ていたミャイーンが言いました。

「にいたん、これは絵ばかりで楽しいのだみゅう。」

「人間の世界で流行っているらしい、ニャーブルの絵本だにゃぁ」

「ミャイーンも描いてほしいのだみゅう。」

「それなら、イザベルさまに頼んでみようにゃぁ。」







次の日、イザベルにニャイーンは聞きました。

「イザベルさま、魔女の森には美術館はないのですかにゃ〜」(ニャイーン)

「美術館はないけど、古い壁画ならピクルス城の地下で見たわね。」(イザベル)

「ほんとうですかにゃ〜見たいですにゃ〜」

「あそこは今は空き家になっていて、貧乏な絵描きさんが住み着いているわ」

「連れて行ってくださいにゃ」

さっそくイザベルは二人を連れてピクルス城にやってきました。

「あれっ、誰もいないわね。地下に行って壁画をみてましょう」(イザベル)

地下に皆で行くと、壁に王様らしき人が描かれています。





「これが噂のピクルス王ですにゃ。すごい壁画ですにゃ〜」

壁画の前に立ってじっと見ていると、絵がなにやら叫んでいるようです。


「寂れた王宮だっ!美しい娘、ジュリアはどこだー!緑の子、姫を探せー!」(ピクルス王)

隣の絵に描かれた緑の子が返事をしています。

「姫様は今2人目のお子様の出産まじかでお休みになられております。」(緑の子)





「ここは、イギリスかぁ?キョットーン??」

「壁画になってまでしゃべっているのだみゃ〜」(ミャイーン)

「まるで、ハリーポッターの世界みたいですにゃ」(ニャイーン)

「このかたは立派な王さまなのだつかぁ〜だから、壁画の拝観料をみんなに払ってもら
うでつかぁ〜」と、
つかごちゃんが出てきて言いました。







「えっ、ここは空き家じゃなかったの?つかさちゃん?」(イザベル)

「私はつかごだつかぁ〜岡山に住んでるだつかぁ〜」(つかご)

「よく似てるから間違えちゃったわ。つかごちゃんというのね。」(イザベル)

「そうだつかぁ。これは壁画で外せないから拝観料貰うように、
ジュリア姫に言われたのできただつかぁ〜」

「金貨一枚、三人で三枚だつかぁ〜」

しぶしぶ拝観料、金貨三枚を払って三人は地下から出ました。






出口のあるお部屋に戻ると、どこかで見たことのある絵描きさんがいました。


「こんにちは。あなたどこかの王様にとても似ていますにゃん」(ニャイーン)

「いらっしゃいでしゅ。うーん、それは他人の空似というのでしゅね。」(フォーちゃん)





「私たち壁画を見に来たのだけど、丁度良かったわ。絵描きさん、この子たちの絵を
描いて貰えないかしら?」(イザベル)








「私はでしゅね、フォービズムの大家と家族の間では評判なのでしゅ。」(フォーちゃん)

「フォービズムってなんですにゃん?それ、またダジャレですにゃん!」(ニャイーン)

「フォービズムなんて困るわ。肖像画なんだから、写実にして貰わないと」(イザベル)

「写実でしゅか?それは困りまちたね。写実はあまり得意ではないのでしゅよ」(フォーちゃん)

「まぁ、いいわ。基本の形さえあれば、私の魔法で仕上げるから」(イザベル)






「で、どなたを描いたらよろしいのでしゅか?」

「まずはこの子からよ」とミャイーンをイザベルが連れてきました。

ミャイーンはいつのまにか、レンタネコのぼりを持ってオリジナル衣裳を着ています。

「この、のぼりはなんでしゅか?」

ミャイーンがもじもじしていると、横にいたニャイーンが言いました。

「それは、映画を見てネーミングだけお借りしたのですにゃん」(ニャイーン)

「つまり、パクッたのでしゅね。」(フォーちゃん)
「・・・」

「では、それを持ってポーズをとってくだしゃいね。」

絵描きさんは、キャンバスに向かうとさささっと描き出しました。

「それくらいで、もういいわ」

「えぇっ、フォービズムの巨匠でしゅのに・・・」

「線さえあれば、魔法で写実にかえられるから大丈夫なのよ」(イザベル)

「そうでした。過去にシンデレラと王子様の肖像画を、
イザベルさまが直されましたのだにゃ〜」(ニャイーン)







「にいたん、おなかが空いたみゅ〜」

「あらあら、帰ってお昼にしないとならないわ。ニャイーンの絵は後で届けてね。」

形を描いて貰うとイザベルちゃんは、貧乏な絵描きさんに金貨を二枚支払いました。

「こんなに貰って良いのでしゅか?これならケーキをずっと食べられのでしゅ〜
ありがとうございまちた」

イザベルちゃんとミャイーンは先に帰り、
ニャイーンもデッサンを後から貰って帰ってきました。






次の日、ニャイーンとミャイーンの肖像画はもう出来上がっていました。
あれっ、ニャイーンはいつのまに、長靴を履いた猫の衣裳を着たのでしょうか?

今、二人の部屋には素敵な写実の肖像画がかかっています。

ところで、この肖像画も実はお話をしているみたいなのです。

「にいたん、レンタネコに行って来たのだみゅ〜」(絵の中ミャイーン)

「それで、可愛がって貰えたのかにゃ〜?」(絵の中のニャイーン)

「前に猫に脅されたから、猫は大嫌いだと言われたのだみゅ〜」

「も、もしかして、その猫は長靴を履いてたと言ってなかったかにゃ?」

「にいたんは天才だみゅ〜長靴って言ってたのだみゅ〜」

「・・・」


ミャイーンをレンタルしたのは、やはりバレンタインちゃんのようです。

肖像画の中には、また別の世界がひろがっているようですね。



おしまい











フォービズムの巨匠フォー画伯の作品です
これはフォーちゃんが描いた絵でしゅよ。
見てくだしゃい




ミレーしゃんの落ち穂ひろいの絵の中に
つかさちゃんとミャイーンちゃんがいましゅね






シンデレラの王子様に頼まれて描きました



イザベルちゃんがお人形になってましゅよ



バレンタインちゃんが小学生だった頃の絵でしゅ。



フォーちゃんの力作でしゅ。