フォーゼルとツカサーテル3


しかし、いくら食べさせても、フォーゼルはまったく太りません。
魔女のおばさんは、とうとう怒りだして言いました。
「ああ、いい加減にしてよ。いつになったら食べられるの。もう痩せててもかまわないわ。
あたしの我慢も限界を超えたわよ。今すぐ大鍋にお前をぶちこんで、食べてやるわ。
さあツカサーテル、急いで大鍋に水を入れて火にかけるのよ。」(イザベル)
 
こきつかう魔女のおばさんに、ツカサーテルはだんだん腹が立ってきました。
(おにぃをゆでる手伝いをさせられるなんて、なんてひどい魔女なんだ!こんなんだっ
たら飢え死にした方がましだど。
だけど、なんか おかしくないかな?・・・人食い魔女なんて聞いたことないど。ドラ
キュラだって、血しか飲まないはずだけどなぁ・・・) (つかさ)




包丁(ほうちょう)をとぎながらおばさん魔女が横でまた、どなっています。

「さぁ、なにをぐずぐずしてるの。さっさと火をおたき!」(イザベル)
フォーゼルをなんとか助けられないかと、ゆっくりしか動かないツカサーテルに、魔女
のおばさんは、すっかり腹を立てました。
「召使にでもしてやろうかと考えていたけど、こんなウスノロの役立たずなお前など、
いっしょに鍋にぶち込んでやるわ。」(イザベル)




「もう、ほかの事はいいから、お前はかまどに火をつけておいで。」(イザベル)

おばさん魔女は、ツカサーテルのことも、かまどで丸焼きにしてしまおうと考えてる
のかも知れないと、思いました。
 
「あたいは、かまどの使い方がまったくわからないんだど〜。」(つかさ)

「何言ってるんだい。本当に、お前はバカだねえ。こうやってちょっと体をかがめりゃ
、誰だって入れるじゃないか。」(イザベル)
と、おばあさんは、かまどの入口を開け頭をつっこんで見せました。


そのときツカサーテルは、全身の力を込めて、おもいっきり魔女のおばさんを蹴りました。
「ぎゃぁぁぁーー!おまえは何をするんだー!」(イザベル)

かまどに転げ落ちた おばさん魔女は、カミナリが落ちたかと思うほどの叫び声をあ
げました。



ツカサーテルは急いで、かまどの蓋をして、開かないように鍵をしめました。

「おばちゃん、何わめいているのさぁ。蓋はしめたけけど、火はまだ点けてないんだど〜」(つかさ)

「だけど おばちゃんは魔女だし鍵だけじゃちょっと不安なんだどぉ〜魔女の
封印マークつけないとまずいかなぁ。封印の仕方なんて分らないから困ったなぁ〜」(つかさ)

「たれか・・・教えておくれぇ・・・」とふと、つぶやいてしまいました。

すると、ギィーっという音とともにクッキーの扉が開き、そこに見知らぬおばあちゃんが立っていました。


「なんじゃ? 誰かわしを呼んだかの?」(おくれ)

「わしは通りがかりのホームレス魔女なんじゃがな。今日はこの菓子の家の菓子を少し
ちょうだいしに寄ったのじゃが、わしを呼ぶ声がしたからのぉ。」(おくれ)

「ん? 呼んでないよ。でも、もし魔女なら、魔女の封印の仕方って知ってる?」(つかさ)


「あれま、イザベルをかまどに閉じ込めてしまったのかのぉ? この魔女はわしの天敵じゃから、

こらしめにわしの封印をさずけようかのぉ。」(おくれ)

そういうと、ホームレス魔女はかまどの蓋にチョークでおくれと書きました。


「くそぉー、おくれ いったい何をするのよ!!」(イザベル)
「おまえは、わしをゆでガエルにしようとしたのを忘れたのかのぉ。これはほんのお返しじゃてなぁ。
火は点つかぬよう魔法をかけておくから心配するな。しばらくはそこで、ひもじく
ワシの暮らしのつつましさを学んだらよかろう。」(おくれ)

「わしはお菓子の家のチョコレートが大好物じゃて、毎日くるから心配せんでもえぇぞ。」(おくれ)

そういってホームレス魔女は森の中にに消えていきました。


ツカサーテルは、鳥かごに閉じ込められたフォーゼルを急いで出してあげました。
「おにぃ!おばちゃんの魔女は閉じ込めたど!危なかったけど、助かったねん!」(つかさ)
「やったでしゅね。やっぱり、ツカサーテルはしっかり者でしゅね」(フォーちゃん)
 魔女の恐怖から逃れたフォーゼルは、妹をほめて大喜びでした。

かまどの中からおばさん魔女の声が聞こえてきます。
「あなたたちをを食べようとしたのは、うそなのよ。これはわたしのブラックジョークだったのに。
わたしは、目だって良ーく見えてるんだから。」(イザベル)
「お菓子の家の魔女さん。ブラックジョークって嘘だったのでしゅか?
冗談はつうじましぇんょ。僕たちは子供なんでしゅからね。もし、火を点けられたらどうするつもり
だったのでしゅか?」(フォーちゃん)
「ああ、確かにそうね。でもね、そんなときは、必ずあのおくれが助けてくれるのよ。
あいつは天敵魔女でもあるけれど、わたしの事をいつも心配して見守ってくれているの.。
そうだわ、机の引き出しの中にある宝石をあげるから、わたしを許してね。お詫びよ。」(イザベル)



「おにぃ、ここに綺麗な宝石がいっぱいあるどぉ。おかんが喜ぶだろうなぁ。」(つかさ)

「魔女しゃん、僕たちは何も貰わなくても、もうあなたを許していましゅ。でも、家でお父しゃんと
お母しゃんは、お腹を空かせて死にかけていると思うのでしゅよ。なので、
それがあったら、とても助かると思うでしゅ〜。」(フォーちゃん)

「ああ、わたしは魔女だから、宝石なんかいくらでも手に入るのよ。お菓子も好きなだけ
持って行ったらいいわ。」(イザベル)

「そうでしゅか。ごちそうさまでしゅ。宝石もとってもありがとうでしゅ〜。」(フォーちゃん)

「おばちゃんはホームレス魔女の巡回まで、そこで、頑張っていてねん。」(つかさ)


フォーゼルとツカサーテルは机の中にある宝石をポケットに詰め込めるだけ貰い、お菓
子も沢山貰って、二人は急いでお菓子の家を出ました


 
でも、やっぱり帰り道はわかりません。お菓子の家で貰ってきたチョコレートをまいて
、雄馬の少年がまた現れるのを祈りました。

「おにい、なかなかユニコーンは現れないね。もういないのかなぁ。」(つかさ)


「あのユニコーンはホーンを持っていたでしゅね。何かで音でも鳴らしたら、よってくるかも
知れないでしゅ。」(フォーちゃん)



近くにあった笹の葉をとってフォーゼルは一生懸命に吹いてみました。

しばらくぷーぷー吹いていると、突然けたたましい音が二人の背後からこだましました。
そこには湾曲した円錐形の角で出来た笛を、誇らしげに鳴らす雄馬のユニコーンがたたずんでいました。


「お馬しゃん、僕たちお家にかえりたいのでしゅ。よかったら助けてくだしゃいな。」(フォーちゃん)
フォーゼルは今度はクッキーを地面に少しまきながら頼んでみました。

少し離れて見ていると、用心深く後ずさりながらも雄馬は草むらの中に置かれたクッキ
ーを拾ってたべました。

「クッキーは食べましゅね。今度は大きいのをあげるでしゅ。」(フォーちゃん)

森の外れまで雄馬は二人のお菓子を拾っては、また離れて道を進み、二人はそれについて行きました。

しばらく行くと父親がいつも木こりをしている森が見えてきました。

「ありがとうでしゅ。もうわかりましゅよ。」フォーゼルがつぶやくと同時にもうユニ
コーンの姿は消えていました。

「全然しゃべらないけど、言葉がわかるみたいだったよねん。でもってハンサムだから
胸キュンしたどぉ〜。」(つかさ)




よく知っているいつもの遊び場の森に入った途端、二人は駆け出しました。

「お父しゃん! お母しゃん! ただいまでしゅー!」(フォーちゃん)

「おおっ、フォーゼル!」(グラントン)
「ああっ、ツカサーテル!」(トット)
元気なフォーゼルとツカサーテルの姿を見て、お父さんとお母さんは涙を流して喜びました。

「お前たちが帰ってきてくれるなんて夢のようだよ。お前たちがいれば、もう食べ物が
なくてもかまわない。
うえて死ぬ時は、家族みんな一緒だよ。」(トット)
見るとお父さんもお母さんも、すっかりやせてしまっていました。
二人の子どもたちの事が心配で、あれから食事ものどに通らなくなってしまったのでしょう。
「おとんも、おかんも、こんなに痩せちゃって。。」(つかさ)


そして二人はポケットに入れていた物を取り出して見せました。
「でもだいじょうぶでしゅ〜。これで、すぐに元気になれるのしゅよ〜」(フォーちゃん)
お父さんもお母さんも、二人のおみやげのお菓子を見てびっくりしました。

「森の魔女にもらったのかい?」(グラントン)

「うん、そうでしゅよ。森の魔女さんが全部くれたんでしゅ〜。」(フォーちゃん)

「とってもブラックジョークのきつ〜い魔女だったけどねぇ。」(つかさ)

それから四人は、おかしの家から持って帰ってきた宝物のおかげで幸せに暮らしました。




そうそう、あのお菓子の家ですけどね、おくれさんは毎日お菓子の家の巡回怠りなしの
ようですよ。
早く封印解いてとかまどの中の魔女は騒いでいますが、封印はまだ解かれておりません。
でも、なぜか嬉しそうな様子に見えます。
あっ、何やら聞こえてきます。
「お昼にカエルの燻製だけは嫌だっていったでしょ〜。それから、わたしのカエルを日
干しにするのはやめて!!」(イザベル)
「何を言うとる。カエルはここでは、高タンパクなんじゃ。わがまま言うてると封印と
かぬぞぇ〜。」(おくれ)
やっぱりこの二人 仲良しなのですね。

おしまい