ちびフォーちゃんの赤ずきんちゃん


 水玉赤ずきんについて行くとめずらしい赤と白の水玉の目立つキノコをみつけました。
「これは毒キノコでしゅかねぇ?」良く見るとキノコは不思議な動物の頭についていました。
「もちろん毒さぁ。これを食べたらしばらくは体が痺れて動けないよ」と、
キノコを採られたくないキノコちゃんは言いました。



「このキノコはね、麻酔の様に何にも感じなくなりまちゅが、しばらくしたら治るんでちゅ」と
水玉赤ずきんがナイショで教えてくれました。

「なんだかとっても役立ちそうなキノコなんでしゅね。ケーキを少しあげましゅから、
赤ずきんにキノコをくれましぇんか?」
赤ずきんから美味しいケーキを貰ったキノコちゃんは「キノコはまた生えてくるからもいでもよいよ」
と頭を差出ました。赤ずきんはキノコをひとつ籠の中に入れて気がつきました。
「そうだったでしゅ、いそいで行かないとダメなのでしゅ」
 
水玉赤ずきんたちと別れた赤ずきんは、おばあちゃんの家に急ぎました。




おばあちゃんの家に行ってみると、入り口の戸が開いていたので、赤ずきんは不思議に思いました。
「おかしいでしゅね? おばあしゃんはいつも戸を閉めてるでしゅのに」
 赤ずきんが家の中へ入ると、いつもとちがった、へんなにおいがするような気がしました。
 でもそれが、オオカミのにおいだとは気がつきません。
 部屋のおくのベッドには、おばあちゃんがねています。
「こんにちはでしゅ、おばあしゃん」
 赤ずきんが大きな声であいさつしましたが、なんの返事もありません。
 赤ずきんは、ベッドに近づきました。



(あら、おばあしゃんの様子が変でしゅね。病気でこんなになってしまったのでしゅか?)
 赤ずきんは思い切って、おばあちゃんにたずねてみました。

「おばあしゃん、おばあしゃんの耳は、ずいぶんと大きいのでしゅね」
 すると、おばあちゃんに化けたオオカミがいいました。

「そうとも、お前のいうことが、よく聞こえるようにね」

「それに、目が大きくて光っていて、いつものおばあしゃんよりずっとずっと可愛いのでしゅ〜」

「おおそうかい。かわいいお前を、よく見るためにパッチリ開いているのだよ」

「それに、おばあしゃんの手は大きいのでしゅ。おばあしゃんの手は、こんなに大きかったのでしゅか?」

「そうだよ。大きくなくては、お前をだいてあげることができないもの」

「それからなんといっても、その大きなお口。おばあしゃんのお口があんまり大きいので、
びっくりしちゃうのでしゅ〜」

「そうとも。大きくなくては、お前を・・・」

「お前を?」

「食べられないからさ!」
 オオカミはそういうと、赤ずきんをパクリと飲み込んでしまいました。



「ああ、食った食った。ばあさんに女の子。二人も食って、まんぷくだ」
 オオカミは、すっかりおなかが大きくなったので、そのままいびきをかいて寝てしまいました。

 そこへ、いつもこの森で狩りをしている猟師(りょうし)が通りかかりました。

 猟師が家の中へ入って、ベッドに近よると、
「おや〜 ばぁしゃまが、でっかいいびきをかいて寝ているでしゅよ…何時もと様子が違いましゅ。
フォーちゃん心配なので、急いで見て来るでしゅ。ややっでしゅよ!これは悪いオオカミではないでしゅか。」




猟師は、ねむっているオオカミを鉄砲で殺してしまおうと思いましたが、もしかする
と、食べられたおばあちゃんが、おなかの中で生きているかもしれないと思いました。
「おや?このキノコは森の麻酔キノコでしゅね。しかし、だれがこんな所に・・・まあ、ちょうど良いでしゅね。」
そう考えた猟師は麻酔キノコをオオカミの口に挟みました。

「よし、これでしばらくは麻酔が効くはずでしゅ。」




そういいながら、大きなはさみでオオカミのおなかをジョキジョキと切りだしました。



するとまず、赤いずきんが見えました。
 そして、女の子がとびだしました。
「ああ、ビックリしたでしゅ〜! オオカミしゃんのおなかの中って、まっくらなんでしゅ〜」
 その次に、おばあさんがオオカミのおなかから、
「よっこらしょ。やれやれ、ひどいめにあったよ」と、出てきました。



 おばあちゃんは寝たきりで動けなかったはずですが、オオカミに食べられたショックで、
病気がどこかへふき飛んでしまったのです。
 元気になったおばあちゃんは、赤ずきんちゃんにいいました。
「赤ずきんや、庭にある石をたくさん持ってきておくれ。この悪いオオカミを、
こらしめてやらないとね」

 そして赤ずきんがたくさんの石を持ってくると、おばあちゃんは石をオオカミのおなかにつめこんで、
おなかをはりと糸でぬいあわせました。



さて、しばらくしたあと、やっと目をさましたオオカミは、のどがかわいて近くの川に行きました。
「ああ、おなかが重い。少し食べ過ぎたかな?」
 オオカミが川の水を飲もうとしたとたん、お腹の石の重さにバランスをくずして、
オオカミはそのまま川にドボンと落ちてしまったのですが、 

それを水玉赤ずきんちゃんがロープをオオカミに投げて助けてあげました。
さすが森の番人の娘です。



「オオカミのおなかに石を詰めたのは動物虐待でちゅよね。もう二度と人間を食べたり
しないと誓うなら、石の溶ける薬草をわたちが、あげまちゅよ」

「本当に溶けるのかい?」

「はい、とけるでちゅ。全部とけるには安静にちて数年かかるのでちゅが・・・」
オオカミは二度と悪いことはしないと水玉赤ずきんに誓いました。
(ああ、怖かった。あのばあさまたちは、最悪だ〜)



悪いオオカミが改心したので、みんなはひと安心しました。
(ああ、怖かったでしゅ〜それに、せっかくの主役だったのに、良いところを水玉赤ずき
んに食われてしまったのでしゅ〜これからは、絶対みちくさはしないのでしゅ〜。)
 赤ずきんちゃんは、深く心に誓うのでした。